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由良【episode7】〜永久T(とわ)〜







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それは、例年より遅く桜の花が咲き出した、少し風の強い日の事だったと思う。


学園を囲むように植えられた桜は、まだ若いながらも立派な花を咲かせ、


時折、風に花びらを持っていかれては、その枝をさわさわと揺らしていた。



早朝の生徒会室で、いくつかの書類を処理し終えた私は、コーヒーを飲みながら窓の外を見ていた。


カタン、と、後ろで椅子が引かれる音がして、振り向くと、



「ね、西篠生徒会長。放課後にこれ、お願いします。」



にっこりと笑いながら、私に書類を差し出したのは、結城 誠一、生徒会副会長だった。



「生徒会長に立候補した覚えは無いんだけどね・・・。」



書類を受け取り、私がそう言うと、結城は、



「2期も連続で生徒会長をやっておいて何を今更。1年の女子が言うところの、学園のアイドルでしょうが。」



「・・・頼むから、その呼び方はやめてくれ・・・」



がっくりと肩を落として書類に目を落としながら、私は言った。





何故、立候補しない私が2期も連続で生徒会長に選ばれたかと言うと、それはまず、昨年の後期生徒会選にさかのぼる。


この学園の生徒会選は4月と、10月に行われる。昨年の10月、生徒会選の時に、まだ1年だった私は、


立候補もしないのに、生徒会長に選ばれてしまった。


生徒会長に立候補する者がいなかったのがその理由で、


4期連続で生徒会長を務めた前生徒会長が3年生だった為、立候補出来ず、


自由に誰を投票してもいいという投票制がとられたのだ。


そして、実際に票を開いてみると、ダントツで結城と・・・何故か私の票が同数だったらしい。


元々副会長に立候補していた結城が生徒会長になるのが普通なのだか、


副会長以外はやらないと結城がつっぱねたおかげで、生徒会長になってしまった。


あとは生徒会顧問に泣きつかれてなし崩し的に後期生徒会長に納まることになった。


当時、憧れの清彰様が駆け落ちをして行方不明になって、すっかり意気消沈していた私には、いい機会だったのかもしれない。


結城が言う学園のアイドル・・・と言うのは、


昨年の文化祭で生徒会でバンドをやることに結城が勝手に決め、そのヴォーカルに更に勝手に決まってしまった私は、


渋々舞台に立ったのだが、この高校を受験する予定の女子中学生がそのライブを見て、


どう言う訳か、気に入られてしまった私と結城は、


入学式の挨拶をする頃には、新1年生女子から学園のアイドルと呼ばれていた。


しかも、入学式の挨拶の途中、キャーキャーと騒ぐ女子生徒を思わず叱り、


それが、どういうわけか父兄、PTA、先生、更に叱ったはずの女子生徒にまでも気に入られてしまい・・・


こうして、この4月の前期生徒会選でも立候補しないまま生徒会長に選ばれてしまった。


・・・そういうありがたくない状況からだった。




「まあまあ、それもこれも、リンの何事もやるからには手を抜けない性格のせいなんだから、諦めろって。」


がっくりとうなだれた私に、結城が止めを刺した。



「結城、・・・学園のアイドルだとかに自分も入っていることも忘れないで欲しいね。」



結城に向かって精一杯の反撃に出ると、



「忘れたことなんて無いとも。だいたい、ライブが成功だったのは、俺のギターのおかげだしね。」



そう言いながら、ギターを弾くジェスチャーをする。


結城自身、本気を出せば人気も自信も実力も私など比べ物にならない程あるというのに、何故生徒会長を辞退するのか理解に苦しむ。


前に直接そう聞いたことがあったのだが、「お前の補佐がしたかっただけだ」と、事も無げに答えられた。


更に結城は、「俺に補佐をしたいと言う気を起こさせたのもお前の実力って事だ。」そう言って笑った。


全く、変わった奴だと思う。


だが、実際、唯一気兼ねなく話せる友達でもある結城との時間は私にとって一番落ち着けるものだった。



「それに、ほら、今年の文化祭でまたバンドをやって欲しいって投書が毎日来てもうこんなに。」


結城の指す先には、マジックで『ライブ希望☆』と嬉しそうな字体にイラストがびっしり書かれたダンボールが2つ積み上げられている。


あんなのを書くのは書記長の河井だな・・・やれやれと手元の書類をたぐり、



「・・・分かった。予算提出が遅れている演劇部とパソコン部ととラグビー部に予算提出を依頼してくればいいんだな。」



「よくお分かりで。そういうデキるところも自分の首を絞めてることは言わないで置こう。うん。」



「・・・独り言は聞こえないようにやってくれないか。」



結城といつもどおりのやり取りをしていると、




バターン!!と、勢い良くドアが開いて、飛び込んできたのは、ダンボールのイラストを描いた河井 美奈、生徒会書記長だった。



「ご、ごめんなさーい!遅れましたぁ〜!」



いきなり場に花が咲いたような雰囲気を持ったこの少女は、入学早々1年生で前期生徒会選に立候補し、


緊張しすぎて壇上で派手に転び、マイクを壊すという前代未聞のハプニングを起こし、それがウケて、


書記に当選したと言う経歴の持ち主だ。



「美〜奈〜、何回遅刻したら気が済むんだろうねー?君は。」



河井の生徒会始まって以来の失敗の連発に、先日河合美奈の教育係に指名した結城が早速彼女を叱った。



「ごめんなさい!だって、思わず2度寝しちゃって〜。」



慌てて私の後ろに隠れながら、河井が言った。



「ほう、2度寝か〜、遅刻した理由が2度寝かあ。美奈にお仕置きしようと待ち構えていた生徒会長を目の前にして、

 2度寝とはいい度胸だね?」



私に目で合図をしながら結城が言う。どうやら、河井に少しお灸を据えてやろうという考えらしい。


仕方がなく、結城の策略に乗ってやる事にした私は、ため息をつくと、後ろにいる河井の肩を捕まえた。


明らかに怯えた河井が涙目でこっちを見ている。


どうにも、私は河井には恐れられているらしい。だから、結城が私を選んだのだろうが。



「河井さん、全く君って子は仕方が無いね。・・・放課後、一番に生徒会室に来て、待ってなさい。いいね?」



少し怖い顔でそう言うと、河井は更に涙目でこくこくと頷いた。


可哀想だけど、河井には放課後まで少し、怖い思いをしてもらおう。


もし、本当に一番に来ていたら、美味しい紅茶でも入れてあげようかと思いながら、


泣きそうな顔で一番に来ている河井を想像して、思わず笑いそうになる。



「さて、私は朝練中の演劇部とラグビー部に行って本日中の提出を催促してくるよ。

   パソコン部部長は同じクラスだから休み時間にでも言っておく。」



手元の書類を振りながら、ドアに向かうと、結城が声をかけてきた。



「放課後でもいいんだぞ。」



「結城が私にこんな依頼をすると言う事は、再三の勧告後ってことだろう。

 朝の内に言っておけば、放課後中までにどうにかするだろう。それにしても、期日が過ぎているのに、待っているお前も甘いな。」



「リンの甘いのが伝染ったかな。・・・そうそう。演劇部で朝練中のの文化部長で演劇部部長の高田 はるか嬢には特に厳しく頼む。

 先代の4期連続生徒会長の広哉先輩に頼まれてるんでね。」



「ああ、分かった。」



懐かしい名前に微笑みながら外に出ると、私はまず、ラグビー部のある校庭へと向かった。



生徒会室から校庭へは、中庭を過ぎて、今は実験室や特別授業室として使われている旧校舎を通るのが一番近道だった。




そして、そこで、私は、彼女と出会う事になる。














遠距離恋愛の誠一&美奈を出してみました(笑)
更に、短編にある、先輩@の広哉先輩とはるかの名前も^^;
オープン記念って事で^^;;;
高校時代のリン、楽しんでいただけたら幸いです。







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