AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する





由良【episode4】〜由良と由羅〜







長い夢をみていた気がする。



どこまでもつながる海原に、小さな船が一艘。



寂しくて、寂しくて、不安で目がさめた・・・





目覚めると、そこにあったのは、大きなベッド。


こういうのをキングサイズっていうのかな・・・?ってくらいの大きなベッドに、


お姫様のベッドに付いてるような贅沢な天蓋がある。


ぼんやりと横になりながら、夢で見た海原のように広く感じるシーツの上を


見るともなく見ていると、誰かが部屋に入ってくる気配がした。


カチャリ、と。


入ってきたのは、昨日のあの綺麗な長髪の男の人だった。


確か、リンさん?だっけ・・・。



「由良様、ご気分はいかがですか?」



彼の声を聞いて、初めて昨日の出来事が一気に浮かんだ。


そう、昨日の朝、学校に遅刻して、校門を乗り越えてるところを


リンさんに声をかけられて、バランスを崩して校門から落ちて気を失って、


気付いたら、このお屋敷にいて、お父さんが生きてるって聞かされて、


そうだ・・・、お父さんの手紙を読んで涙が止まらなくなって・・・あとは覚えてない。


多分、泣き疲れて寝てしまったのかもしれない。


今更ながらに昨日の事を思い出して、恥ずかしくて顔が火照った。


だって、こんな格好いい男の人に恥ずかしいところばかり見られてる・・・。



「頭は、痛みませんか?」



心配そうに私の顔を覗き込む彼にドキドキしすぎて、頭がどうにかなりそうだった。



「一時的な脳震盪(のうしんとう)だと思うのですが・・・。

 検査の結果も異常ありませんでしたし・・・」


そういいながら、私の頭の包帯を丁寧な手つきでほどいてくれる。


昨日、校門から落ちて頭を打った時にそんな検査を受けていたなんて。



「もし、少しでもご気分が悪いようでしたら、仰ってくださいね。

 こう見えても医師免許は持っていますから。」



にっこりと優しい笑みを浮かべてさらりとすごい事を言うリンさんに



  「あの、大丈夫です・・・」



やっとの思いでそう答えると、



「それは良かった。」



と彼は、満面の笑みでそう言った。


包帯も、ほんのかすりキズの為に巻いてあったみたいで、少し大げさなものだった。



「これなら、キズも今週中には消えるでしょう。

 あの時、すぐにお助けしたのですが、落ちるとき校門に器用に頭をぶつけられたみたいで・・・

 お怪我をさせてしまって申し訳ありませんでした。」



実に大真面目に言われて、居心地悪く、小さくすいませんと言う私に、



「抱きとめた時に気を失われていたのには、正直、生きた心地がしませんでしたがね。」



少し苦笑してから、



「なんにせよ、これからは私が由良様の執事兼、教育係として、



 行動を共に致しますのでよろしくお願いします。」



は?き、教育係? いきなりの彼の発言に飲み込めないでいると、



「勉強をお教えするのはもちろん、身の回りのお世話や、食事も一緒にとらせて頂きます。」



「え?あの、リンさん・・・?」



「私のことは“リン”と。」



にっこりと微笑ってそう言われても・・・



「さあ、こちらのテーブルに服を用意しています。

 着替えが終わりましたら、外に出てください。食堂にご案内いたしますから。」



部屋中のカーテンと窓をを開けて、リンさん・・・じゃなくて、リンは、部屋の脇にある四角いテーブルと服と、


レースのカーテンを透けないほどに幾重にも贅沢に重ねた脱衣スペースを案内してくれた。




どうやら、一夜にしてシンデレラにでもなってしまったようで、


肌触りの良いワンピースに着替えて、外に出ると、古い建物の様だけど、


よく手入れの行き届いたまるで宮殿のような廊下が続いていた。


リンにエスコートされて行った食堂もかなりの広さで貧乏高校生としては、


オドオドとするしかない。


用意してくれた朝食も一般家庭の朝ごはんに比べると、かなり贅沢な部類に入ると思う。


だいたい、私の朝ごはんはいつも、紅茶とヨーグルトだけだったし・・・。



「わぁ・・・」



焼きたての香りの良いパン数種類と、バターやジャム、野菜がふんだんに使われた玉子料理に、


透き通るようなコンソメのスープ、トマトの乗ったサラダ、ミルク、紅茶、いくつかのフルーツとヨーグルト。


とても美味しそうなんだけど・・・・・。


・・・ミルクと、サラダにトマトがたくさん乗っているのが・・・ねぇ。




お父さんとお母さんが事故でなくなって、(実際はお父さんは生きていたんだけど。)


私は叔母さんに育てられた。


叔母さんはまあまあ有名なファンタジー小説家で、それはそれは不摂生な生活をしていて。


幼い頃からその叔母さんに育てられた私も、叔母さんの好き嫌いというか、偏食グセが


すっかり伝染ってしまってた。


だって、叔母さんと来たら、三度の食事は摂らなくても、お酒は絶対飲む!


って言う人だったから、コンビニの料理とかスーパーのお惣菜ばかりを食べて育ったの。


だから、好きなものだけ食べられたし、特別嫌だとは思わなかった。


でも、学校の給食はもちろん色々と食べられないのが多くって、叔母さんは、


「由良ちゃんの偏食グセを何とかしてください!」って担任の先生から


学年が変わるたびに言われては、「あ、あはは・・・、す、すいません・・・」


って毎年あやまってた。


でもねぇ、自分がもっと偏食だから、言えるわけ無いよねぇ・・・。


でも、それが祟って叔母さんは昨年、肝臓を壊して亡くなっちゃったんだ・・・。


それからって言うもの、偏食グセを治そうって試みたけど結局嫌いなものは嫌いで。


もう、いいやっ・・・てあきらめてたのに、まさかこんなにいきなりピンチが訪れるとは・・・。


だって、好き嫌いなんて子どもっぽくて、また、リンに恥ずかしいとこ見られちゃうよ・・・。


そんなことを考えてじっとお皿を見つめていたら、



「由良様?どうされました?食欲がありませんか?」



「や、その、なんていうか、あんまり、お腹すいてないみた・・・・・い」



あわてて言おうとしたら、



ぐーーきゅるるるる・・・・・



って、お腹が鳴っちゃった。



「ち、ちがうの!これは、その、お腹すいてるとかじゃ・・・」



あわてて手を振って誤魔化そうとしたけど、昨日1日なにも食べてないし、お腹すいてるに決まってる。


でも、でも、トマトが、ミルクが・・・



「由良様・・・?」



怪訝な様子で見守るリンに、バレないように、苦笑いしながらそーっと、スープに手を伸ばした。


スプーンですくって、一口飲んでみると、


「あ、・・・おいしい・・・。」



「でしょう?たくさん召し上がって下さいね。」



にっこりと綺麗な微笑みを披露してリンが言った。


あんまりお腹すいてたものだから、それからパン、スープ、サラダ、と


次々手を伸ばしていくうちに、



「由良様、もしかして、トマトはお嫌いですか?」



と、いきなり聞かれて心臓が飛び出そうになた。


なんで?なんで気付かれたの?(汗)と思ってサラダの皿を見ると、


明らかにトマトだけが皿の上に残っていた。


(しまった・・・!いつものクセで!)


ミルクに手を付けていないのはまだバレてないみたいだけど・・・、


これじゃ、誰だって気付くよね・・・。


慌てて「や、ほら、最後に食べようかなって思って・・・」


と言い捨てて、ちょっとトイレにって出てきたはいいけど・・・・。


困った。かなり困った。


どうしたものかと頭を抱えていると、視界の隅に歯磨き用のコップが写った。


このお屋敷のトイレには、ちゃんとしたホテルのアメニティーの様に、


高そうなコップが伏せられて、綺麗な柄の布で覆われているの。


ちょっと、これ、使えるんじゃ無いかな?


そっとコップを手にとってみる。


慎重にやればバレないよね?


悪いことだって分かってるけど・・・、けどでも、今すぐ食べるのはムリ!


頭の中の天使と悪魔は戦うまでもなく、悪魔の不戦勝で。


かくして計画は実行に移されちゃったわけ。


こっそりコップを後ろ手に忍ばせて、席について、しばらく残りのスープを飲んだり、


リンと天気について話したり。


なかなか不自然で動き出せないよ・・・と思ってたそのとき、チャンスは訪れた!


メイドさんがうまい具合につまずいて、デザートを床にぶちまけてくれたの。



「ちょっと失礼。」



言ってリンがメイドさんを助け起こしに行ってる隙に、急いでトマトをコップに放り込んで、


リンさんがこっちを見てないのをいいことに、そっとそのままトイレに向かった。


ホッとしながら廊下を歩いていると、


トイレの前にリンが・・・・いた。


な、なんで?どうして?


焦る私を尻目に、余裕の笑みを浮かべてリンは壁に手を付いている。


まるで、ここから先は通しませんよと言わんばかりに。



「由良様、どちらへ?」



自分で行く手を塞いでおいて、どちらへ?も無いものだけど、今の状況は完全に


私にとって不利で。つまりは、全てお見通しって事・・・?



「その手に持っているのは何ですか?」



にっこりと問うリンが妙に怖くて。


慌てて後ろに隠そうとして、手が滑って床にぶちまけてしまった。


トイレから拝借してきたコップがカシャンと割れて、中のトマトが床に散らばって


高級そうなベージュの絨毯がうっすらと赤く染まった。



「動かないで!破片で怪我をしますよ!」



ふわっと抱きかかえられて、少し離れたところに降ろされると、


音を聞きつけてやってきたメイドさんがコップを片付けに来て。


悪いことして、しかも好き嫌いもリンさんにバレて恥ずかしくて、メイドさんたちにもバレて、


もう、訳が分からなくなった。



「も・・・やだっ・・・」



次の瞬間、自分でも分からないけど、私はその場を走り出してしまった。











な、長い!あんまり長いので2ページに分けました。(汗)






<NEXT> <由良目次へ>  novel TOPへ  TOPへ