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由良【episode3】〜優しい夢T〜







清彰様は由羅様が居られたときも、由羅様亡き後も、実の弟の様に私を可愛がって下さった。



「清彰様…。」



「おう、リンか。よく来たな。」



由羅様が亡くなって数週間後、私は清彰様の自室を訪れた。


部屋に入ったとき、清彰様は酷く神妙な面持ちで何やら考え込んでいるようだった。


しかし、私の姿を見てとると、とたんに優しい微笑をたたえて私を招き入れてくれた。


「最近すっかり遊びに来ないから、嫌われたのかと思ったぞ?」


と、冗談交じりに言いながら、私にコーヒーを淹れてくれる。


私は彼の淹れたコーヒーが大好きだったので、


優雅な仕草でコーヒーを淹れる清彰様を見ながら言った。



「嫌いになるだなんて・・」



「ははは、冗談が過ぎたか。あんまりリンが可愛いもんでつい、



 こんなことを言ってしまった。すまない」


清彰様がそう言いながら湯を注ぐと、コーヒーのいい薫りが辺りに広がった。



それにしても、可愛いだなんて子ども扱いだ・・・。



砂糖のビンに手をかけて清彰様は



「リン、砂糖は2つでミルクたっぷりでいいんだったな?」



と、聞いてきた。



「いりません。」



幼い私は、きっぱりとそう言ってカップを受け取った。



「砂糖無しで苦くないのか?」



清彰様が心配するように言った。



「苦くありません」



そう言ってカップに口をつける。


本当は苦く無い訳は無かった。


ただ、早く大人になりたくて背伸びをしていたのだ。



「無理しなくていいんだぞ?リンはまだ子供なんだから」



清彰様に子供だと言われたのが腹立たしくて5歳の私はおじい様のよく言う台詞をまくしたてた。



「いいんです。私は早く大人になりたい。そして、一日も早く鴻上家のお力になるのです」



てっきり、褒められるものだとおもっていたが、


私の意に反して、清彰様は実に悲しげな表情で私を見つめた



「リン・・・」



清彰様の手が幼い私の頬にふわりと触れた


彼の悲しげな表情に少なからずショックを受けた私は居心地悪く視線をはぐらかした



「お前は誰のために生きるんだ?何をそんなに急く?」



その声は例えようも無く悲しげで



「まだ子どもでいいんだ。リンは自分の道を歩めばいい。」



くしゃり と、髪を撫でる仕草がとても子ども扱いに感じたのか、


まだ子どもでいいと言われて悔しかったのか良く分からない



ただ―


ただひどくカッとなって、幼い私は叫んだ



「放っといてください!!」



ガシャーーン!



・・・と、、派手な音を立てて次の瞬間、手に持っていたカップを叩き割っていた・・・。


自分でもあの瞬間の事はあまり覚えていないのだが、自分で割ったカップだけでなく、


同時に周りにあった食器も割れ、気付けばまだ十分火傷するほど熱いコーヒーが


私や清彰様の手や足にかかっていた。



「ぁっ・・・!」



「ばっ・・・馬鹿ものっ!」



熱いと口にするより早く、清彰様に担ぎあげられて次の瞬間には部屋の隣にあるバスルームで


冷たいシャワーを浴びせられていた清彰様は自分が濡れるのも気にせず


熱いコーヒーのかかった服を脱がして私に火傷が無いか切り傷が無いか


ひどく心配そうに調べてくれた。



「わ・・・私のことより、清彰様が・・・」



私がそう言うと、清彰様は見たことも無いほど怖い顔で



「私のことはいい!どこも怪我は無いな?痛いところは無いんだな?」



と、すごい剣幕で訊かれた


私がうなずくと、ほっとしたように清彰様は幼い私の肩を抱き寄せて



「寿命が縮まるかと思ったぞ。・・これ以上、大切な人に何かあったら私は・・・」



・・・後はシャワーの音が邪魔をして聞こえなかった・・

















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