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由良1〜出逢い〜








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「お迎えに上がりました。」


―散り始めた桜が雪の様に舞う桜吹雪の中で。


あの日、遅刻して校門を乗り越えようとよじ登っていた私は背中で初めてリンの声を聞いた。


振り返って声の主を見るなり思わず見とれた。


吹雪の様に舞う桜の中、バカ高そうな黒塗りの車の横に立つ黒服の綺麗な男性…


その光景は私を現実から引き離すのに充分だった。


そして、バランスを崩して校門から落ちるのにも充分だった…。



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……あの、桜の中でリンと初めて会った日、


校門から落ちた私は頭を打ち、気を失って次に目覚めたのは絢爛豪華な部屋のベッドの上だった。


「…気が付かれましたか。」


声に驚いて見ると、そこに居たのは朝見た男の人だった。


切れ長の深いグレイの瞳、長い黒髪、細く白い顔、引き締まった身体…



彼は年頃の娘なら誰しもが惹きつけられる外見をしていた…



「あ………」


慌てて声を上げようとした私に、


「…私の事はリンとお呼び下さい。」


そう優しく言うと、彼はまるで私が偉い人とでも言うように胸に手を当てて軽くお辞儀をした。


「…あのっ…、……いっ……たぁーっ……!」


ここはどこなんですか?と起き上がりざまに聞きかけていきなり頭に激痛が走った。


「あまり動かれないように!怪我をしていらっしゃる。」


すぐさまリンと名乗る男の人に支えられた。


頭を手で押さえると包帯が巻いてあった。


…そうだ、私…校門から落ちたんだった…。


「全く…無茶をなさる。」


彼は苦笑いをしながら口を開いた。


低い、でも澄んだ声が妙に心地よく響いた。


「打ち所が悪かったら大変な事になってたんですよ。」


やんわりとそう言われて恥ずかしくて顔が熱くなる。


「もう、あんな危ない事をしてはいけません。いいですね?」


困った子供を叱る様に優しく言われて居心地が悪かった。


「分かりましたか?」


「は、はい。ごめん…なさい…。」


ガチゴチに固まってそう答える。


すると、彼は少し微笑って、


「よろしい。今度あんな危険な事をしたら…、お仕置きですよ?」


なんて笑顔で言われて。


冗談だと思った私は、少しホッとして彼にきいてみた。


「あの、ここは…どこなんですか?」


返って来た言葉は本当に予想外のものだった。


「ここはあなた様の家でございます。お帰りなさいませ。…由良様。」





─お母さんとお父さんが交通事故で亡くなったのが12年前。


その日、私は叔母さんに預けられてて無事だった。



そして私は、お父さんが孤児だった為、お母さんのたった一人の血縁者の叔母さんに育てらる事になった。


でも、その叔母さんも去年、病気で亡くなって…私は文字通りの天涯孤独になってしまった。


叔母さんを亡くしたショックから立ち直るまで時間がかかったけど、


お父さんとお母さんと同じ大学に行くのが叔母さんとの約束だったから、


叔母さんが残してくれた遺産でなんとか細々と高校生活を送ってた。




そんな私からすればリンの話はまるでおとぎ話の様に信じ難いものだった。


孤児と聞かされてたお父さんがとある組織の御曹司で母と駆け落ちをして私が生まれた事。


12年前の事故で瀕死の状態だった父は組織によって他の病院に搬送され、奇跡的に命を取り留めていた事。


叔母さんには二人とも死んだと報告が行き、組織は私の存在を知らなかった事。


そして、12年経った今、叔母さんの死を知った父が私を引き取ると言い出した事……。




そんなおとぎ話が信じられなくて戸惑う私に彼が一通の手紙を差し出した。



「これを…。」



渡された手紙を見て涙が止まらなかった。


そこには、お母さんを愛し、私の成長を陰ながら見守って来たお父さんの姿があった。


自分の様に組織のしがらみで愛する人と結ばれない思いをさせるぐらいならと、


敢えて引き取る事を諦めた事やそれでも私の成長をそばで見守れ無かった後悔が切々と綴られていた。



─由良、もし君が私を許してくれるなら、もう一度親子になれないだろうか…。



今更、許せるとかじゃない。


だけど、憎んでもいない。死んだと聞かされてきたから。


でも、それでも、お父さんは生きている…。


そう思うだけで暖かいものがたくさん込み上げてきた─


おばさんを失って、この世界でたった一人になってしまったと思っていた。


先生や友達に明るく振舞う度に飲み込んでいた言葉…。



…寂しかった…。



ずっと、ずっとさみしかった。おばさんといた時も心のどこかでさみしかった。


おばさんを失って本当の一人ぼっちになったと思ってた。


だけど、…一人じゃなかった……


気付いたら私はリンの胸に顔をうずめて泣き崩れていた。





─それから、私は…海外で重要な取り引きをしているお父さんが帰って来るまでは

実質屋敷の主としてこの屋敷に住む事になったんだけど…。



そして、…リンの言ったお仕置き発言が冗談で無かった事を知るには2日とかからなかった…。



でもま、それはまた…別のお話…。
















由良第1作目。
・・・と言ってもいいくらい、最初のエピソードです。
元々、キー的恐怖心を煽る表現を意識して書いたのが始まりだった作品の、本編です。(笑)







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